黄砂、PM2.5とぜんそく
春先から初夏にかけて、日本では「黄砂(こうさ)」や「PM2.5」といった大気中の小さな粒子が問題になります。これらは私たちの健康にさまざまな影響を与えるため、注意が必要です。
黄砂・PM2.5とは?
黄砂は、中国やモンゴルの砂漠地帯から風によって運ばれてくる砂ぼこりのことです。粒子が非常に小さいため、空気中を長い距離にわたって移動し、日本にも飛来します。
一方、PM2.5とは、「Particulate Matter 2.5」の略で、大きさが2.5マイクロメートル以下の非常に小さな粒子を指します。これは黄砂に含まれることもありますが、主に自動車の排気ガスや工場の煙など、人間の活動によって発生するものが多いと言えます。2.5マイクロメートルとは、髪の毛の太さのおよそ30分の1程度しかない大きさです。目に見えないほど小さいため、呼吸によって簡単に体の中に取り込まれてしまう危険があります。
今年の黄砂・PM2.5の特徴
2025年の春は例年に比べて、黄砂の飛来が非常に多いと予測されています。さらに、PM2.5も中国や国内での工場活動の影響で高濃度になる日が増えるとみられています。特に風の強い日や晴れて気温が高い日は、大気中の粒子が停滞しやすく、注意が必要です。
黄砂・PM2.5が呼吸器疾患に与える影響
黄砂やPM2.5は、呼吸を通じて体内に入りやすく、気管支炎肺炎といった呼吸器の病気を引き起こす原因になります。
特に、小さな子どもや高齢者、もともと肺に持病がある人(例:慢性閉塞性肺疾患(まんせいへいそくせいはいしっかん)、ぜんそく)は影響を受けやすいので注意が必要です。粒子が肺の奥深くまで入り込み、炎症を引き起こすことがあります。
また、呼吸器に負担がかかるため、せきや息苦しさ、のどの痛みといった症状も現れやすくなります。
黄砂・PM2.5がアレルギー疾患に与える影響
黄砂やPM2.5は、アレルギー性鼻炎やアトピー性皮膚炎の症状を悪化させる場合があります。
粒子に含まれる化学物質や細菌などが、免疫反応を過剰に引き起こし、くしゃみ、鼻水、目のかゆみ、皮膚の赤みやかゆみといったアレルギー症状を強くするのです。
また、黄砂そのものがアレルギー反応を引き起こすアレルゲン(原因物質)になることもあり、春になるとアレルギー症状がひどくなる方も増えています。
黄砂・PM2.5がぜんそくに与える影響
黄砂やPM2.5は、ぜんそくの症状を悪化させます。これらの微粒子が気道に付着すると、炎症が悪化し、せき込んだり、呼吸が苦しくなったり、夜中や朝方に発作を起こしやすくなります。
また、もともとぜんそくのない人でも、長期間にわたって高濃度のPM2.5を吸い続けると、ぜんそくを発症するリスクが高まることが指摘されています。
ぜんそく患者さんは、黄砂やPM2.5の多い時期には特に、早めに予防的な吸入薬を使用するなど、主治医と相談しながら対策を講じることが大切です。
黄砂・PM2.5を防ぐための予防策
黄砂やPM2.5から体を守るためには、日常生活で以下のような工夫が大切です。
- 気象情報をチェックする
環境省や気象庁のホームページ、天気予報アプリなどで、黄砂やPM2.5の飛散状況を確認しましょう。 - 外出を控える・時間帯を選ぶ
飛散が多い日はできるだけ外出を控え、どうしても外出が必要な場合は、早朝や夜間を避けるようにしましょう。 - マスクを着用する
不織布(ふしょくふ)マスクやPM2.5対応のマスク(N95マスクなど)を使うと効果的です。普通のマスクでもある程度の粒子を防ぐことができます。 - 室内の換気を工夫する
粒子が多い日は窓を開けず、空気清浄機(PM2.5対応フィルター付)を使うのがおすすめです。換気する場合は、飛散が少ない時間帯に短時間で行いましょう。 - 帰宅後はうがい・手洗い・洗顔を
外から戻ったら、口や鼻に付いた粒子を洗い流すため、うがい、手洗い、洗顔をしましょう。衣服をはたくのも効果的です。
黄砂・PM2.5を吸入してしまった時の対応方法
もし黄砂やPM2.5を吸ってしまったと感じた場合は、次のように対応してください。
- 症状が軽い場合
うがいをして、のどについた粒子を洗い流しましょう。水分をこまめに取り、喉や気道を潤すことも有効です。 - せきや息苦しさが続く場合
市販のせき止め薬ではなく、必ず医療機関を受診してください。特に、ぜんそくを持っている方や、小さなお子さま、高齢者の方は早めの対応が必要です。 - ぜんそく発作が起きた場合
速やかに吸入薬を使用し、それでも改善しない場合はすぐに救急受診してください。発作に対しては迅速に対応することが大切です。
最後に
黄砂やPM2.5は、誰にとっても無関係ではありません。特に呼吸器疾患やアレルギー、ぜんそくをお持ちの方は、毎日の情報に注意を払い、早めに予防と対応を心がけましょう。当院では、ぜんそくやアレルギーに関する診療も行っていますので、お気軽にご相談ください。